トイガンカスタム・空想銃デザイン工房。

CQCナイフ(スネークイーター版)

プラ素材のフルスクラッチでMGS3のビッグボス愛用のCQCナイフを、個人的趣味でイメージ再現してみた試作作品。

フルスクラッチ(プラ製)作品

▼CQCナイフというツール

CQCとは【Close Quarters Combat:近接格闘】の略称で、軍隊や警察において近距離での格闘戦闘を指す。

狭い通路や室内、視界の狭いジャングルや茂み、航空機内やバスの車内といった場所では、敵との接触寸前で銃火器を射撃することも困難な、物理的に極めて近い距離で戦わねばならない場合がある。

そんな状況において、ナイフや打撃武器/紐といった近接武器(もしくは徒手空拳)を用いた格闘技術で相手を倒す、という戦術概念が「CQC」である。

現実の歴史としては、第二次世界大戦期にイギリスの軍人ウィリアム・E・フェアバーンが考案した「フェアバーン・システム」が現代軍用格闘術の源流である。

その後、この体系化された近接戦術は実際の戦闘において有効であると認められ、東西問わず世界中の軍隊や警察に取り入れられた。

また同じく格闘を軸とした近距離での近接戦闘技術としては、ロシアの軍隊格闘術「システマ」やイスラエルの近接格闘術「クラヴ・マガ」など、おおむねの概念は同じだが起源やテクニックの違う技術が複数存在する。

一方、ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズでは、CQCは唯一独自の戦闘技術として(多少デフォルメされて)描かれた。

設定では、第二次世界大戦の英雄にして“特殊部隊の母”とも呼ばれた伝説の兵士「ザ・ボス」が、1950年代に弟子となったジョン(後のネイキッド・スネーク/ビッグボス)と二人で編み出した、まったく新しい近接格闘技術とされている。

劇中では主にナイフと拳銃を使用し、それらを同時に構えることで射撃とナイフ格闘を臨機に使い分けて近距離で敵を無力化するという、限定的な近接戦闘技術として描かれた。

そしてその特徴的な「拳銃+ナイフ」スタイルで繰り返し使用されていたのが“CQCナイフ”である。

1964年のバーチャスミッションおよびスネークイーター作戦において、主人公ネイキッド・スネークは足首に縛り付けた大型のサバイバルナイフの他に、このCQCナイフを左胸に装備していた。(同じくCQCを使うザ・ボスも同じ位置に装備している)

この装備位置ならば姿勢を変えることなく素早くナイフを鞘から引き抜くことができる。
拳銃を右手で構えたまま視線を逸らさず、左手でナイフを逆手で抜き、そのまま銃のグリップにナイフのグリップを密着させナイフを持ったまま両手保持で拳銃を構える。
これがCQCの基本姿勢である。

そのナイフのデザインは、非常にシンプルだ。

ブレードはストレート形状の直刃で、峰側には敵を押さえつけるためのセレーションと突起を備えている。
この部分はCQCにおいて非常に重要で、この部位を引っ掛けて敵の腕を抑えたり、首元や喉などの急所に押し付けて動きを封じたりといった使い方をする。

そうしてナイフ一本と身体全体を使って瞬時に相手を拘束し、攻撃能力を奪った上で、地面に投げつけて気絶させたり首を絞め落とす。他に複数の敵がいる場合には、拘束した敵兵を盾として仲間をひるませ、容易に攻撃させないように利用する。

また刃の先端はかなりの鋭角で鋭く尖っており、刃物としての切断能力に加えて刺突にも優れる。止むを得ない場合にはこれで喉を掻き切ったり刺すことで完全に敵を無力化(=殺すことが)できる。

ブレード素材は堅牢な6mm厚のステンレス鋼。
全長は240mm程度と、サバイバルナイフに比べて小振りながら、取り回ししやすく拳銃と一緒に構えても邪魔にならないサイズである

表面処理は腐食防止と不用意な光の反射を抑えるパーカライジング(リン酸塩化成処理)で、刃端部分以外は全て艶消しのグレー色。
数々の激戦を潜り抜けた現在ではこの表面処理も薄く剥げかけており、所々生地の鋼の色が見えてはいるが全体の剣呑といっていい存在感は今も健在だ。

そのブレードを収めるシース(鞘)は牛革製。適度に柔らかく刃を最低限の面積で保護し、しかし確実に収納・保持できる。
表面には細引きの革紐を鞘に巻きけるように通しており、この張りと緩みの調整によってブレード保持の微妙なテンション調節が可能。また鞘口には金属製のホックが打ち込まれ、激しい動きによる不意の脱落を防いでいる。

グリップはパラシュートコード(頑丈なナイロン製の紐)編みで、180cm程の長い一本のコードで編まれている。パラコードは摩擦や引っ掻きに対する耐性が非常に高く、素材的にも腐食の心配がない。さらにこれを立体的に編むことで、握った際にフィンガーチャネルのように指に引っかかり、雨や泥に浸かっても滑りにくい。

この紐は少し余裕を持たせた長さで、グリップエンド(日本刀で言うところの柄頭)に開けられた穴を通して少し延ばしたあと先端を結んで仕上げられている。 この余った紐はグリップを握った際に指に挟み込むことによって、手からナイフが脱落するのを防ぐことができる。
特に拳銃のグリップに添えたり離したりといったCQC動作の最中においてナイフの取り落としは致命的で、そういった意味でも実は重要な機能を担っているのである。

このようにCQCナイフはその各部のデザイン全てにおいて「CQCのため」に特化したツールなのだ。

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